ブルガリアのローズ③

ブルガリアの中央に東西に連なるバルカン山脈とスレドナ・ゴラ山脈に挟まれた一帯は「バラの谷」と呼ばれ、香料バラの生産が盛んに行われています。
谷の中心部にあるカザンラクとその周辺では毎年6月始めにバラ祭りが開催され、日本からも多くの観光客が訪れます。この谷のタルニケン村に、1909年に創業された「エニオボンチェフ社」の蒸留工場があります。


緑あふれる森の中に突如現れる大きな木の扉が蒸留所の門です。
門を入ると広大な敷地にも緑がたくさん。

昔バラ摘みに使われていたという木の籠が置いてあります。


エニオボンチェフ社は、ブルガリア最大規模のローズオイルメーカーとして日本でも有名で、輸入販売されている会社様も多いです。ブルガリアで唯一 、スイスの有機認証機関IMOの認定を受けていて、ダマスクローズの他にアルバローズ、ラベンダーも自社の畑で栽培し、蒸留しています。


屋外にある蒸留スペース。2m弱の高さの舞台みたいになっていますが、部外者は上に登ることはできません。ステンレスの蒸留器ですが、生産量が多いためかかなり大きいです。


こちらは創業当時に使われていた蒸留器のレプリカ。
屋内では銅の蒸留器も使われていました。


世界のローズオイルの7割がブルガリアで生産されていて、1kgのエッセンシャルオイルを抽出するのに、約3000-3500kgの花弁が必要だそうです。


収穫されたダマスクローズは袋に詰めてこの大きな秤で重さを測り、蒸留へ。
ここではたくさんの男性が肉体労働されていました。花びらと言っても花弁もあるし水分を含むので結構重いのです。女性には難しい仕事かも知れません。


今回通訳をしてくれた日本人の倫(Rin)さんは、日本から人形劇の勉強にブルガリアに来てそのまま住んでいる人形作家兼コーディネーター。ヨーロッパでは絵本も出版されている多才な女性です。ブルガリアには巨大な撮影所もあって、映画テルマエロマエの撮影もされたそうです。彼女の完璧な下調べ&根回しのおかげで計画性のない私は本当に助かりました。


エニオボンチェフ社には資料室のような部屋もあって、一般の方でも創業当時の写真や道具などを見ることができます。社員の方が歴史や蒸留方法など英語で説明してくれます。自家製ローズやラベンダーの精油、ローズウォーターも蒸留所価格で購入できます。


再び外に出て、蒸留所裏の畑に向かいます。畑は分散して何か所かあって、ここの畑はあまり大きくないとの事でしたが咲いているところを見せてもらう事に。


緑が多くて綺麗に整備されている敷地内を抜けて行きます。鳥の声も清々しく本当に空気がきれい!


小ぶりですがとても香りの良いダマスクローズ!午後でバラ摘みも終わっていましたが、枝にはたくさん蕾も残っていて畑全体から生命力を感じました。
ブルガリアでは現在人手不足が深刻で、バラ摘みはジプシーの方が中心となって行っていますが、それでも年々摘み手が減っているそうです。
これだけの素晴らしいローズが摘まれることなく枯れてしまうのはとてももったいない事なので、今後もダマスクローズの素晴らしさを啓蒙して、日本でも生活の中に本物のローズを取り入れる習慣を広めて行きたいと思っています。

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